
禁煙に手遅れはありません

喫煙はメタボリックシンドロームとは独立した心血管病やガンの最も強い危険因子です。特に喫煙者では、タバコの有害物質に直接暴露される消化器や呼吸器に喉頭ガン、食道ガン、胃ガンや肺ガンなどが非常に発生しやすくなります。喫煙者には痩せている人が多いのですが、痩せた喫煙者が肺ガンになる危険性は太った喫煙者の10倍以上という報告もあります。
患者さんに喫煙のことをたずねると、「私は、酒もタバコもやりません」という返事がよく返ってきます。つまり、一般の方々の多くは、酒とタバコが同等の健康を害する嗜好品とみなしています。この認識は改めなければなりません。

喫煙は心血管病やガンの危険性を増加させるだけでなく、肺気腫や慢性気管支炎など慢性閉塞性肺疾患の最も重要な危険因子です。慢性閉塞性肺疾患のほとんどは喫煙(受動喫煙を含む)がきっかけとなって肺胞の破壊や気道の炎症を招き、緩徐ですが不可逆的に進行します。真綿で首を絞められるような呼吸困難が続き、発症後数年~十数年で呼吸不全を起こし、死に至ります。呼吸不全になる前に肺ガンや肺炎で命を落とすことも稀ではありません。ヘビースモーカーの患者さんに痩せている人が多いのは、酸素を取り込む力が不足してエネルギー消費が増え、食欲の低下などによるエネルギー摂取量が減少して栄養障害を起こしやすいからです。したがって、喫煙者では痩せていることが生活習慣病の免罪符にはなりません。痩せていても心臓血管病に罹りやすいのです。
放射能汚染は常に深刻な社会問題を引き起こします。これは、放射能が目に見えず、知らぬ間に人体に侵入して健康被害をもたらすからです。では、タバコはどうでしょうか。実はその恐ろしさはわずかな放射能汚染の比ではありません。タバコの煙から発生するタール、ニコチン、一酸化炭素やシアン化水素は血管収縮、血液凝固、動脈硬化、発ガンを招く有害物質です。こういった有毒ガスは、ご本人のみならず、大切な周りの人々の健康にも甚大な悪影響を及ぼします。非喫煙者が受動喫煙で吸い込む副流煙に含まれる有害物質の量は、喫煙者が吸い込む煙よりも多いのです。2006年に公表された「米国公衆衛生総監報告」においても、受動喫煙による健康への影響が次のように報告されています。(1)受動喫煙によって冠動脈心疾患のリスクが25~30%増加する、(2)喫煙者との同居に伴う受動喫煙が原因で肺ガンのリスクが20~30%増加する、(3)受動喫煙と乳幼児突然死症候群の間には関係がある、(4)親の喫煙による受動喫煙と、幼児および子供における下気道疾患との間には関係がある、(5)親の喫煙と、中耳炎や慢性滲出性中耳炎の間には関係がある、というものです。また、アメリカ癌協会が調査したところによると、喫煙による死者は世界で毎年600万人、それによる経済損失は毎年5,000億ドル(約47兆円)にも達するそうです。

枚方市周辺で禁煙をご希望の患者様はぜひご相談ください。