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生活習慣病~肥満や生活習慣病はテーラーメイド医療で治したい

生活習慣病とは飽食、運動不足や喫煙といった好ましくない生活習慣の積み重ねによって引き起こされる高血圧、糖尿病、脂質異常症などの病気です。かつて生活習慣病は「成人病」と呼ばれ、高齢者は高血圧や糖尿病になって当たり前という考えが定着していました。しかし、元聖路加国際病院の故日野原重明先生らによって1970年代から指摘されていた「成人病の本態は生活習慣病」との提言を受け、1997年に当時の厚生労働省は「成人病」から「生活習慣病」に名称を変更しました。これによって、生活習慣病の原因は加齢にあるのではなく、好ましくない生活習慣にあることが知られるようになったのです。

メタボは心筋梗塞や脳卒中の危険因子が目白押しです

好ましくない生活習慣に起因する「メタボ」という言葉が流行って久しくなりました。「メタボ」とは言うまでもなくメタボリックシンドロームの略語です。私は「メタボ」という表現があまり好きではありません。「メタボ」からは人生の重大事であるという切実感が伝わらないからです。
メタボリックシンドローム=肥満という認識も正しくありません。皮下脂肪が蓄積することによる肥満は病気ではありません。メタボリックシンドロームの特徴は内臓脂肪が蓄積することによる内臓脂肪型肥満です。
メタボリックシンドロームは日本語で代謝症候群とも呼ばれ、生活習慣病に繋がる種々の代謝異常を合併しています。それに伴って、メタボリックシンドロームでは心筋梗塞や脳卒中の危険因子が目白押しです。

「リンゴ型肥満」がメタボの特徴です

メタボリックシンドロームの診断基準は国によってさまざまですが、概ねどこの国でも「腹部肥満」「高血圧」「高血糖」、「高中性脂肪血症」「低HDLコレステロール血症」のうち2~3項目が当てはまればメタボリックシンドロームと診断されます。日本では内臓脂肪の指標として腹囲が重視されています。男性では腹囲が85cm以上、女性では90cm以上がメタボリックシンドロームの必須条件です。これは内臓脂肪面積に換算すると100cm2以上に相当することが知られています。内臓脂肪の面積を正確に計算するためにはコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴断層撮影装置(MRI)で内臓を輪切りにした断層写真を撮影することが必要です。メタボリックシンドロームを早期発見するための特定健診でルーチンワークとしてCTやMRIを撮影するとお金と時間がかかり過ぎるために腹囲で代用しているのです。なぜ、男性の方が腹囲の設定条件が厳しいのかと申しますと、女性の肥満は皮下脂肪型(洋梨型)であることが多く、男性のそれは内臓脂肪型(リンゴ型)であることが多いからです。皮下脂肪は手でつまむことができますが、内臓脂肪は腹腔内に存在するため手でつまむことができません。男性では一見痩せて見える人も、実は内臓脂肪が蓄積してメタボリックシンドロームの診断基準に該当することが少なくありません。しかし、女性の腹囲の基準が甘いという意見も多く、将来的にはこれが見直されるかも知れません。

メタボの診断基準は?

メタボリックシンドロームの診断基準では上記の腹囲に加えて高血圧(収縮期血圧130mmHg以上、または拡張期血圧85mmHg以上)、高血糖(空腹時血糖110mg/dL以上)、高中性脂肪血症(トリグリセライド150 mg/dL以上)、低HDLコレステロール血症(40mg/dL未満)のうちどれか2つ以上を満たす場合をメタボリックシンドロームと診断し、どれか1つだけ当てはまる場合をメタボリックシンドローム予備軍と診断します。


わが国におけるメタボリックシンドロームの診断基準

高血圧、高血糖、高中性脂肪血症、低HDLコレステロール血症は内臓脂肪の蓄積によってもたらされる互いに関連した心血管病の危険因子です。中性脂肪は悪玉コレステロールの粒子を小さくさせ、悪玉コレステロールを血管の中に入りやすくさせます。HDLコレステロールはいわゆる「善玉コレステロール」と呼ばれ、血管壁から動脈硬化の原因となる「悪玉コレステロール」を引き抜き、肝臓まで運ぶ働きをしています。悪玉コレステロールLDLも心血管病危険因子の一つですが、これは内臓脂肪の蓄積とは直接関係がないのでメタボリックシンドロームの診断基準に加えられていません。

「メタボリックドミノ」の恐怖

メタボリックシンドロームは内臓脂肪の蓄積に起因して互いに関連する心臓血管病の危険因子が集積した病態です。メタボリックシンドロームに伴う肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症は「死の四重奏」とも呼ばれ、これらの楽器が奏でる死のオーケストラは脳卒中や心筋梗塞のリスクを数十倍に高めると言われています。
好ましくない生活習慣という牌を倒すことによって、まず肥満、内臓脂肪の蓄積がおきます。生活習慣病になりやすい体質・遺伝的素因を持った人では、内臓脂肪の蓄積から脂肪肝、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった牌が次々と倒れます。これらの牌は肝ガン、失明、起立性低血圧、透析、脳卒中、閉塞性動脈硬化症(ASO)、心筋梗塞の牌を倒し、最後には認知症、半身不随、下肢切断、心不全に至る牌を倒します。


メタボリックドミノの恐怖

隠れ糖尿病をチェックしましょう

内臓脂肪の蓄積はメタボリックシンドロームに特徴的な「隠れ糖尿病」の原因となっています。「私は太っているが血液検査では全く異常はなく、いたって健康だ」という人がいます。このように健康診断の結果だけで糖尿病の有無を診断するのは危険なことです。
健康診断は、一般的に朝食を抜いた状態で採血するので、空腹時血糖のみが反映されます。空腹時血糖の正常値は110 mg/dL未満であり、それ以上であれば糖尿病予備軍、126 mg/dL以上となれば糖尿病と診断されます。最近の健診では*HbA1c (ヘモグロビンエーワンシー)も測定されています。高血糖状態が長期間続くと、血管内の余分なブドウ糖は体内のタンパク質と結合します。この際、赤血球のタンパク質であるヘモグロビン(Hb)とブドウ糖が結合したものがHbA1cです。HbA1cは、約1ヶ月の血糖値の平均を反映しています。HbA1c国際基準で6.5以上であれば糖尿病と診断されます。
メタボリックシンドロームでは、空腹時血糖やHbA1cが正常範囲内でありながら、実は糖尿病である「隠れ糖尿病」が非常に多いのです。食後の血糖が200 mg/dlを超えれば立派な糖尿病です。「隠れ糖尿病」は空腹時血糖が正常なので通常の健診では見つからないのです。
隠れ糖尿病はブドウ糖負荷試験で診断します。ブドウ糖負荷試験とは、空腹時に75 gのブドウ糖を内服し、二時間後の血糖値が200 mg/dL以上の場合には糖尿病型と判定されます。メタボリックシンドロームでは、インスリンの効きが悪くなる現象、すなわちインスリン抵抗性によって食後血糖が異常に上昇し、隠れ糖尿病になりやすいのです。
隠れ糖尿病は、心臓大血管の病気に繋がりやすいという特徴があります。心臓大血管の病気には心筋梗塞、脳卒中、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症などがあります。
隠れ糖尿病が心臓大血管の病気を引き起こしやすいのは「グルコース・スパイク」に原因があります。グルコース・スパイクとは、空腹時と食後の血糖値に大きな隔たりが生じる現象です。グルコース・スパイクで比較的太い血管の内皮細胞が酸化ストレスでダメージを受け、動脈硬化が起こりやすくなります。

「隠れ糖尿病」を放置しておくと、ますますインスリン抵抗性が増悪します。その結果、過剰なインスリンの分泌刺激で膵臓が疲弊し、やがてインスリン分泌も低下して空腹時の血糖やHbA1cが増加してきます。健診ではこの段階で初めて糖尿病と診断されます。こうなると、糖毒性(血糖値が高いこと自体による毒性)により微小血管の内皮細胞に障害がおきてきます。微小血管障害によって引き起こされる代表的な病気は、糖尿病性腎症、網膜症および神経障害です。糖尿病性腎症は、腎糸球体が傷つき、アルブミンなどのタンパク質が尿中に漏れ出してネフローゼ症候群となります。さらに進行すれば腎不全から人工透析に至ります。糖尿病性網膜症は、成人の失明原因として多い病気の一つです。糖尿病性神経障害では、感覚神経、運動神経、自律神経に異常がみられ、心筋梗塞を発症しても痛みに気付かず、重症化を招くことがあります。メタボリックシンドロームと診断されれば、単に健診の結果だけで満足せず、「隠れ糖尿病」の有無をチェックすることが非常に大切です。

生活習慣病はテーラーメイド医療で治したい

血管は沈黙の臓器であり、単に動脈硬化が進行しただけでは症状は出ません。動脈硬化は心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、大動脈瘤や脳卒中になるまで静かに忍び寄ってきます。糖尿病もサイレント・キラー(静かなる殺し屋)と呼ばれ、年月が経つにつれて神経、視力、腎臓や心臓が蝕まれていきます。生活習慣病は、そういった重篤な合併症を引き起こす前に手を打たなければならない病気です。もし、治療によって痛みや熱が引かなければ治療法が間違っているのではないかと思い、医者を変えるでしょう。しかし、症状がなければ単に血圧や血糖値だけを判断基準にして、ずるずると間違った治療を受けてしまう可能性があります。高血圧はただ単に血圧を下げればよいのではなく、また糖尿病も単に血糖を下げればよいという病気ではありません。高血圧や糖尿病の治療薬は何十種類とあり、病状や体質に合わせて適切に使わなければ合併症は予防できません。どのような手段によってこれらの生活習慣病を治療するか、その戦略が問われているのです。
生活習慣病は一生つきあっていかなければならない病気です。もし、四十歳で生活習慣病と診断されれば、60年以上にわたって治療を受けなければならない可能性があるわけです。生活習慣病に対する治療は日進月歩です。正しい治療が行われるか否かによってその人の生命予後(寿命)や機能的予後(生活の質)は大きく変わってきます。生活習慣病には個々の体質に合わせたテーラーメイド(個別化)の医療が求められています。正しい治療を受けてこそ健康長寿に繋がるのです。


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